「いいか、悪いか」で考えている時点で、思考が停止してしまいます。この世の中には、無限の可能性があって、あらゆることが起こって、「いい」も「悪い」も、そんな一言で片づけられるわけではないんです。意識で考えた「いい」も「悪い」も、しょせんは、今のわたしが思いつく、ほんのちっぽけな点でしかないんです。そして、そういう意識は、文字通り「白黒の世界」に入っていくことになります。絶望に飲まれて、不安で頭がいっぱいで、となったとき、目の前から本当に色が失われて「白黒の世界」になってしまったような錯覚に陥ります。
わたしが思い出すのは、高校受験の合格発表の日。当時は、直接見に行かなければ確認できなかったから、朝からぎゅうぎゅうの電車に乗って、その憧れの学校に向かいます。その校門をくぐったとき、「こうやって毎日通えるのか」なんていう、期待に胸を膨らませていたのはいうまでもありません。その日は、朝からあいにくの雨で、靴から靴下から、ぼとぼとに濡れて、少し冷えているせいもあって、いつもよりも鼓動が早く、そして大きく聞こえていました。発表まで少し待つ時間があって、傘を差しながら、待っていると、まわりのひとたちがワイワイ言っているなか、自分だけがひとりぼっちで、なんだか不安も人一倍に感じられます。肩の荷が下りたのは、受験のテストが終わった日のはずなのに、発表のときまでガチガチに緊張して、顔のこわばりを感じています。そして、ついに、そのときがきて、吹奏楽部のファンファーレとともに、数字の並んだ大きな紙が貼りだされます。前に並んだ人たちの歓声が響くなか、喜びで抱き合ったりしているなかで、わたしは、わたしの数字がないことを知ったのです。そして、そこからは「白黒の世界」。
しかし、あのとき、あの受験で合格していれば、今の自分はいなかったって、心からそう思うし、むしろ感謝しています。あそこで合格していたら、きっとタロットを勉強することも、整体師になることもなかった。順当に「いい」会社を目指して、「いい」仕事をしていたはずです。わたしは「悪い」ほうの選択肢を見てきたから、声を大にしていいたい。「いい」も「悪い」もないんです。それは、今の意識が勝手に考えてしまっているだけです。すべては、わたしのために、ちゃんと裏で計算されているんです。
『Earth & Bone Oracle』 by Sirian Shadow
陰陽五行による解説
「白黒の世界」は陰陽五行では「金」に象徴されます。「金」は「切る」ということの象徴で、なにかをはっきりと分けることを意味します。そのため、「いい」か「悪い」かの判断にこだわるのも、その世界観にあるからということになります。ここでは「いい」も「悪い」もない、ということで、もっと「無意識」に任せることでいいと書いてみました。「無意識」は「火」なので「火剋金」の関係によって、「無意識」を信じれば信じるほど、「白黒の世界」から抜け出せるようになるのです。
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