占いの本質は「外在化」にある?~運気のせいにすることの意味

陰陽五行・象徴

「最近、運気が悪いんですよね」

占いをしていると、そんな言葉を聞くことがあります。

仕事がうまくいかない。

恋愛が進展しない。

人間関係がぎくしゃくする。

何をやっても、なぜかタイミングが合わない。

そんなとき、

「それは、運気のせいかもしれませんね」

と言われたら、どうでしょう。

少し、気持ちが楽になりませんか?

だって、運気のせいなら、自分が悪いわけではありません。

自分の能力が足りないわけでも、努力が足りないわけでもない。

ただ、今はそういうタイミングなのかもしれない。

実は、この感覚にこそ、占いの大切な役割があるのではないかと思っています。

「運気のせい」で、悩みが自分から離れる

心理療法のひとつに、ナラティヴ・セラピーという考え方があります。

ナラティヴとは「物語」のこと。

人は、自分自身や身の回りに起きた出来事を、さまざまな物語として理解しています。

その中で使われる技法のひとつが、「外在化」です。

簡単にいえば、問題と自分自身を切り離して考えること。

たとえば、

「私は何をやってもうまくいかない人間だ」

と思っている人がいたとします。

ここでは、「うまくいかないこと」が、その人自身の性質になっています。

でも、

「今は運気が悪いから、うまくいかないのかもしれない」

と考えると、どうでしょう。

問題が、その人自身から少し離れます。

「私が悪い」から、「運気というものが影響しているのかもしれない」へ。

問題が自分自身ではなくなる。

これが、占いにおける外在化の働きなのではないでしょうか。

もちろん、運気というものが科学的に実証されている、という話ではありません。

大切なのは、「運気」という言葉によって、問題の捉え方が変わることです。

でも、何でも「運気のせい」にすると?

ところが、ここには落とし穴があります。

「運気が悪いから、仕事がうまくいかない」

「運気が悪いから、恋人ができない」

「運気が悪いから、お金が貯まらない」

「運気が悪いから、人間関係がうまくいかない」

こうなってくると、どうでしょう。

最初は自分を楽にするために使っていた「運気」という言葉が、今度はすべてを説明する理由になってしまいます。

ナラティヴ・アプローチには、「ドミナントストーリー」という概念があります。

その人の経験や自己理解を強く支配する、中心的な物語のことです。

たとえば、

「私は人から嫌われる人間だ」

という物語を持っていると、誰かに褒められても素直に受け取れず、少し冷たくされただけで「やっぱり嫌われている」と考えてしまうことがあります。

さまざまな出来事を、ひとつの物語に当てはめて理解してしまうのです。

これと同じことが、「運気」でも起こり得ます。

「運気が悪いから、うまくいかない」

という説明が、いつの間にか自分の人生を支配する物語になってしまう。

そうなると、もはや自分の意志さえ、よくわからなくなってしまいます。

恋愛運がよければ、幸せになれるのか?

たとえば、

「恋愛運がいい時期ですよ」

と言われたとします。

そして、その時期に出会った人と結婚できた。

では、これは恋愛運がよかったのでしょうか。

おそらく、多くの人は「よかった」と考えるでしょう。

でも、その結婚相手が、実はモラハラをする人だったら?

結婚できたのだから、恋愛運はよかった?

でも、結婚生活はつらい。

だったら、恋愛運は悪かった?

……どっちなんでしょう。

そもそも、「恋愛運がいい」というのは、何を意味しているのでしょうか。

出会いが増えること?

恋人ができること?

結婚できること?

それとも、幸せな関係を築けること?

ここで気づくのは、「恋愛運がいい」という言葉だけでは、幸せかどうかは決められないということです。

仕事運も同じです。

仕事運がよくて、希望する会社に就職できた。

でも、入社してみたら、自分には合わない職場だった。

それは仕事運がよかったのか、悪かったのか。

結局、運気だけでは説明できないことが、たくさんあるのです。

「運気」は、ひとつの要素にすぎない

ここで大切なのは、

運気を否定する必要はない

ということです。

占いの中で、運気という概念を使うことには意味があります。

ただし、それがすべてではありません。

恋愛なら、相手との相性もあります。

お互いの価値観もあります。

関係を築くための行動もあります。

そして何より、本人がその関係を望んでいるかどうか。

仕事なら、能力や経験、職場環境、労働条件、本人の希望など、いろいろな要素があります。

そこに「運気」という見方をひとつ加える。

それくらいでいいのではないでしょうか。

運気がすべてを決めるのではなく、物事を考えるための、いくつもある視点のひとつとして扱う。

それだけで、占いとの付き合い方はずいぶん変わると思います。

風水や厄払いも、見方を変える方法?

ところで、占いには面白いところがあります。

「運気が悪い」と言われたとき、その運気を変えるための方法も、いろいろ用意されているのです。

風水。

厄払い。

吉方位。

開運行動。

もちろん、それぞれに歴史や思想があり、単純に同じものとして扱うことはできません。

また、実際に運気が変化するという科学的な証拠があるわけでもありません。

ただ、心理的な働きとして考えると、面白いことがあります。

「運気が悪いから、何をしてもダメだ」

と思っていた人が、

「部屋の環境を変えてみよう」

「厄払いをして、気持ちを切り替えよう」

「いつもと違う方向へ出かけてみよう」

と考え始める。

すると、今度は「運気が悪いから何もできない」という物語から、少し離れられるかもしれません。

最初は、自分自身から問題を切り離すために「運気」という言葉を使った。

でも、その運気が今度は問題そのものになってしまった。

そこで、さらに別の視点や行動を持ち込む。

これは厳密には、ナラティヴ・セラピーでいう外在化そのものとは限りません。

ただ、ひとつの説明に閉じ込められた状態から、別の可能性を見つけるという点では、共通するものがあります。

「そうではなくて」という、もうひとつの物語

ナラティヴ・アプローチには、もうひとつ重要な考え方があります。

「オルタナティブストーリー」です。

これは、支配的になっている物語とは別の、新しい物語のこと。

たとえば、

「私はいつも恋愛がうまくいかない」

という人がいたとします。

でも、話を聞いてみると、過去には大切にされた経験もある。

自分から関係を終わらせたこともある。

好きな人に気持ちを伝えられたこともある。

つまり、「いつもうまくいかない」という物語だけでは説明できない経験が、ちゃんと存在しているのです。

そこに、

「そうではなくて、こういう見方もできるのでは?」

という別の切り口を持ち込む。

すると、その人が自分自身について語る物語が、少しずつ変わっていくことがあります。

占いも、これに近いことができるのではないでしょうか。

カードが教えてくれるのは、正解だけではない

タロットカードを例に考えてみます。

「私は仕事ができない人間です」

と悩んでいる人がいたとします。

そこでカードを引いてみる。

すると、本人が想像していた「能力不足」とは違うテーマが現れるかもしれません。

たとえば、休息。

あるいは、環境の変化。

人間関係の問題。

自分が本当に望んでいること。

もちろん、カードに客観的な正解が書かれているわけではありません。

でも、普段とは違う象徴が目の前に現れることで、

「そういえば、最近ずっと休めていなかった」

「仕事ができないというより、この職場が合っていないのかもしれない」

「そもそも、この仕事を続けたいんだろうか」

という、別の問いが生まれることがあります。

ここで重要なのは、カードが未来を決定したことではありません。

それまで考えていなかった可能性が、見えるようになったこと。

私は、ここに占いの大きな価値があると思っています。

占いの本質は、未来を決めることではなく

占いというと、未来を当てるものだと思われがちです。

もちろん、未来を予測することも占いの役割のひとつです。

でも、それだけではないと思います。

「運気が悪いから仕方ない」

と思っていた人が、

「運気だけの問題ではないかもしれない」

と気づく。

「私は恋愛がうまくいかない人間だ」

と思っていた人が、

「うまくいかなかった関係もあるけれど、そうでない経験もあった」

と思い出す。

「この仕事を続けるしかない」

と思っていた人が、

「別の選択肢もある」

と気づく。

そうやって、ひとつの物語から離れ、別の物語を見つけていく。

最初に「運気のせい」と考えることで、自分自身から問題を切り離す。

でも、そこにとどまらず、今度は「運気のせい」という説明からも自由になっていく。

外在化することは、何かのせいにし続けることではありません。

自分と問題の間に少し距離をつくり、これまでとは違う関わり方を見つけることです。

そして、そのために「そうではなくて」という別の切り口を差し出す。

占いの本質は、実はそこにあるのではないでしょうか。

「運気のせい」で楽になってもいい。でも、「運気のせい」に縛られる必要はない。

占いによって見える世界が狭くなるのではなく、広がっていく。

そんな占いでありたいものです。

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